新しい事業を始める際には、開業届を提出する必要があります。しかし、税務署や郵便局に行く時間がなかなか作れない方も多いです。
この記事では、開業届をオンラインで提出するための電子申告(e-Tax)に必要なものと手順を解説します。記事を最後まで読むと、開業届をオンラインで提出する方法がわかります。
電子申告(e-Tax)では、Windowsのパソコンやマイナンバーカード、ICカードリーダーが必要です。Macのパソコンでは提出することができません。
実は、開業支援サービス(freee開業など)を利用すれば、電子申告(e-Tax)よりも簡単かつ手間をかけずに、開業届をオンラインで提出できます。WindowsでもMacでも大丈夫です。登録から提出まで無料のサービスであるためコストの心配もありません。開業支援サービスの利用も検討してみましょう。
開業届をオンライン提出するメリット
開業届をオンラインで提出するメリットは数多くあります。大きな魅力となるのが、時間と労力の節約です。紙を一切使用しないため、環境に優しい側面もあります。
オンラインでの提出はシステムが入力ミスを検出できるため間違いを減らせます。メリットを考慮すると、開業届のオンライン提出は時間を有効活用し、環境に配慮したい方に良い選択です。
短時間でいつでも提出できる
開業届をオンラインで提出するメリットの一つは、短時間でいつでも提出できることです。
- 税務署の開庁時間や郵便局の営業時間に縛られず提出できる
- 自宅と税務署・郵便局を往復する移動時間が不要である
- 税務署や郵便局の受付待ち時間が不要である
以上の理由から、オンライン提出によって迅速な手続きが実現します。
オンラインで開業届の提出が完了すれば、即時に受け付けの確認が取れます。手続きの進捗状況を確認できるのもメリットです。時間を大幅に節約できるため、開業届の手続きが効率的に進められます。
自宅から提出できて管理も楽
開業届をオンラインで提出するメリットの一つは、自宅から提出できることです。自宅にいながら、すべての手続きを完了できます。外出する必要がなく、労力の節約が可能です。
オンラインであれば開業届をデジタル形式で準備し、管理できます。手続き自体も手順書や説明書が用意されているため、オンラインサービスが初めての方でも提出作業を進められます。
開業届を電子申告(e-Tax)でオンライン提出するための事前準備
開業届を電子申告(e-Tax)で提出するには、事前準備が必要です。
- 必要な書類や情報を確認する
- パソコンとインターネット環境を準備する
- マイナンバーカードとICカードリーダーを準備する
- 利用者識別番号を取得する
- 電子証明書を取得する
- e-Taxソフトをインストールする
必要な書類や情報を確認する
開業届を電子申告(e-Tax)で提出するには、必要な書類や情報を確認する必要があります。
書類としては「個人事業の開業・廃業等届出書」が必要です。青色申告を選択する場合は、合わせて「青色申告承認申請書」も提出する必要があります。
情報としてはマイナンバーや屋号を用意してください。屋号は決めなくても問題ありませんが、例えば事業用の銀行口座を開設する際に、屋号を付けることができます。屋号を付けることで、職業や事業の概要を伝えやすくなります。ただし、以下の表現を含めることは法律で禁止されているため注意してください。
- 法人と誤解される表現:「会社」「法人」「銀行」など
- 商標登録されている文字
パソコンとインターネット環境を準備する
開業届を電子申告(e-Tax)で提出するには、パソコンとインターネット環境を準備する必要があります。
e-Taxソフトによる開業届の提出は、Windowsのパソコンのみ対応しており、Macのパソコンでは提出することができません。開業支援サービスであれば、WindowsでもMacでも大丈夫です。オンラインサービスごとの推奨環境もスマホなどで事前に確認しておきましょう。
e-Taxソフトの具体的な推奨環境については、e-Taxソフトのダウンロードコーナーの「(2)利用環境の確認」を確認してください。
オンラインでの安全性を高めるため、セキュリティソフトのインストールや更新も不可欠です。ウェブブラウザは最新のバージョンをインストールしましょう。安全にインターネットを利用するために、セキュリティソフトやウェブブラウザの更新は定期的に行い、常に最新版を保つように意識してください。
マイナンバーカードとICカードリーダーを準備する
開業届を電子申告(e-Tax)で提出するには、マイナンバーカードとICカードリーダーを準備する必要があります。
マイナンバーカードがない場合は、市区町村役場での手続きが必須です。マイナンバーカードを持っている方は、ICカードリーダーの準備をしましょう。
ICカードリーダーはパソコンに接続し、マイナンバーカードの情報を読み取るための機器です。家電量販店やオンラインショップで購入できます。購入するICカードリーダーが、パソコンと互換性があるか事前に確認してください。
マイナンバーカードをICカードリーダーに読み込ませて、問題なく作動するかを確認します。手続きを進めるために必要な、マイナンバーカードの暗証番号(PINコード)も確認しておきましょう。
利用者識別番号を取得する
開業届を電子申告(e-Tax)で提出するには、利用者識別番号を取得する必要があります。利用者識別番号はe-Taxを利用するために必要な番号であり、e-Taxの手続きには欠かせません。
利用者識別番号を取得するには、e-Tax「ご利用の流れ」の「利用者識別番号の取得」を確認してください。複数の取得方法から自分に合った方法を選択可能です。オンラインで取得することもできます。
e-Taxにログインする際には利用者識別番号が必要となるため、利用者識別番号を紛失しないように注意してください。利用者識別番号を忘れてしまった場合は、e-Tax「利用者識別番号やパスワードをお忘れになった場合は」を確認してください。
マイナンバーカード方式でe-Taxにログインできれば、e-Taxソフト(WEB版)の「マイページ」の「基本情報」メニューから確認することができます。
電子証明書を取得する
開業届を電子申告(e-Tax)で提出するには、電子証明書を取得する必要があります。電子証明書はインターネット上の手続きにおける本人確認や、文書の信頼性を保証するために欠かせません。
マイナンバーカードに電子証明書の情報が格納されています。情報が格納されていない場合は、住民票のある市区町村役場で手続きをして取得可能です。発行元には公的機関や認証サービス提供者などが存在します。
電子証明書の発行・記録の手数料は原則無料です。手続きには本人確認書類が必要になります。電子証明書の発行に伴い、暗証番号の設定が求められるため、事前に用意しておくと手続きがスムーズでしょう。署名用電子証明書には「6桁~16桁の英数字」、利用者証明用電子証明書には「4桁の数字」の暗証番号が必要です。
それぞれの証明書に有効期間が存在するため、期間が切れた場合は更新・再発行の手続きが必要です。
- マイナンバーカード:カードの表面に有効期間の記載あり
- 電子証明書:「原則として発行日後から5回目の誕生日まで有効」または「マイナンバーカードの有効期間満了で無効」
- 署名用電子証明書:住所・氏名・性別が変更された場合には無効
厳密には総務省「公的個人認証サービスによる電子証明書」の「(3)マイナンバーカードへの電子証明書の記録」を確認してください。
e-Taxソフトをインストールする
開業届を電子申告(e-Tax)で提出するには、e-Taxソフトをインストールする必要があります。e-Taxソフトのダウンロードコーナーの「(4)e-Taxソフトのダウンロード」からダウンロード・インストールしてください。
- e-Taxソフトのダウンロードページを開く
- e-Taxソフトをダウンロードしてパソコンにインストールする
- インストール完了後にソフトを起動して初期設定を行う
- マイナンバーカードをICカードリーダーに読み込ませる
以上で「開業届をオンラインで提出するための事前準備」は完了です。
開業届を電子申告(e-Tax)でオンライン提出する方法
事前準備が完了したら、e-Taxソフトを起動して開業届をオンラインで提出しましょう。提出後は送信データと受信通知を保存または印刷して控えとしてください。
e-Taxソフトを起動して項目に沿って入力する
e-Taxソフトを起動して自宅で必要な情報を入力し、開業届を提出できます。e-Taxソフトを起動した後の手順は以下のとおりです。利用者ファイルの作成は初回起動時のみ行います。
- 利用者ファイルを作成する
- 利用者情報を登録する
- 開業届を選択・作成する
- 作成した開業届に電子署名をする
- 電子署名した開業届を送信する
開業届を選択した後、入力項目に従って個人情報、事業所の所在地、事業内容や開業日などの詳細を入力します。入力内容の確認をした後に、電子証明書を使用して電子署名をしましょう。送信ボタンをクリックすることで、開業届がe-Taxを通じて提出されます。
詳細な操作マニュアルについては、e-Tax「マニュアルコーナー」の「e-Taxソフト」を確認してください。
提出後は送信データと受信通知を保存または印刷して控えとする
提出後は、送信データと受信通知を保存または印刷しておくことが大切です。開業届をオンラインで提出すると、受信通知が提出完了の証拠となります。
受信したメッセージは120日を過ぎると過去分に移され、さらに1,900日(約5年間)が過ぎると既読・未読に関わらず削除されます。削除される前に必ず保存または印刷しておきましょう。
送信データと受信通知がセットで開業届の控えになるため、両方を保存または印刷してください。セットで保管しておくと、必要な時にすぐに確認できるため安心です。
開業届をオンライン提出する際によくある質問
開業届をオンラインで提出する際によくある質問に対して回答します。主な疑問は、手続きがうまくいかない場合の対処法や、提出期限の有無です。
開業届のオンライン提出がうまくいかない場合はどうすればいい?
オンライン提出がうまくいかない場合は、以下のチェックリストを確認してみてください。
- パソコンは推奨環境を満たしているか
- ネットワークに接続されているか、通信速度に問題はないか
- e-Taxソフトのダウンロード・インストールは手順通りにできているか
- マイナンバーカード、電子証明書、署名用電子証明書の有効期間が終了していないか
- ICカードリーダーに不具合はないか
- 開業届の項目の入力漏れや入力ミスがないか
- 作成した開業届に電子署名ができているか
エラーメッセージは対処の手がかりになるため、表示されていれば指示に従ってください。国税庁のウェブサイトで、システムメンテナンスや障害情報がないかも確認する必要があります。それでも問題が解決しない場合は、国税庁への問い合わせや、後述する電子申告(e-Tax)以外の開業届の提出方法を検討してください。
開業届の提出期限はある?
所得税法第229条より、開業届の提出期限は事業を開始した日から1か月以内と定められています。提出期限が過ぎても罰則はなく、開業日から時間が経過しても提出は可能です。
期限内に提出する理由は、以下の通りです。
- 税務上の優遇措置を受けるため
- 消費税の納税タイミングに影響があるため
開業届を出すことで、最大65万円の特別控除が使える青色申告を選択できます。消費税は、開業してから2年間は免税事業者となります。税務処理をスムーズにするため、開業届は早めに提出しましょう。
電子申告(e-Tax)以外の開業届の提出方法
電子申告(e-Tax)以外の開業届の提出方法には、以下の方法があります。
- 税務署の窓口で直接提出する
- 郵送で提出する
- 開業支援サービスでオンライン提出する
それぞれの詳細やメリット・デメリットについては、以下の記事で解説しています。
提出先は、対象の税務署を間違えないように事前に確認しておきましょう。自分が住んでいる地域の税務署は、国税庁のウェブサイト(国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」)で簡単に確認することができます。
まとめ
開業届のオンライン提出には「短時間でいつでも提出できる」「自宅から提出できて管理も楽」というメリットがあります。電子申告(e-Tax)によるオンラインでの提出には、いくつかの事前準備が必要です。
- 必要な書類や情報を確認する
- パソコンとインターネット環境を準備する
- マイナンバーカードとICカードリーダーを準備する
- 利用者識別番号を取得する
- 電子証明書を取得する
- e-Taxソフトをインストールする
事前準備が完了したら、e-Taxソフトを起動して項目に沿って入力します。提出後は、送信データと受信通知を保存または印刷して控えにしてください。
オンライン提出にトラブルが生じた場合は、それまでの過程に問題がないか1つずつ確認することが重要です。それでも問題が解決しない場合は、国税庁への問い合わせや、電子申告(e-Tax)以外の開業届の提出方法を検討してください。
開業届のオンライン提出は時間や労力を節約できるため、事前準備を整え、スムーズな開業手続きをしましょう。