フリーランスにとって確定申告の知識は不可欠です。確定申告を適切に行えば、税務上の義務を果たしながら、賢く節税することができます。一方で、手続きや制度が複雑で戸惑う方が多いのも事実です。
この記事では、確定申告の基礎知識から必要書類と申告手順まで網羅的に解説します。記事を読めば、確定申告の手順がわかり、スムーズな申告・納税と節税ができるようになります。
フリーランス必見!確定申告の基礎知識
フリーランスにとって確定申告は必須の手続きであるため、基礎知識を身に付けることは欠かせません。所得の種類や経費の計上、控除の申請などを理解しておくとスムーズな申告が可能です。
フリーランスが知っておくべき以下の基礎知識を解説します。
- 確定申告の目的
- 確定申告の所得の種類
確定申告の目的
確定申告は過去1年の所得に応じた税金を計算し、国に報告する手続きです。払い過ぎた税金があれば還付を受け、不足分があれば追加で納税します。
税務調査の際には、確定申告書が基礎資料として役立つため、正確な記録を残すことが大切です。納税者が公平に税金を納め、国の税収と社会保障制度を適正かつ持続的に運営するための制度です。
確定申告の所得の種類
確定申告では、さまざまな所得を正確に申告する必要があります。所得の主な種類は以下のとおりです。
所得の種類 | 内容 |
給与所得 | 給料や賞与 |
退職所得 | 退職金や一時払いの老齢給付金 |
事業所得 | 自営業や個人事業(不動産所得・山林所得を除く)から得た所得 |
不動産所得 | 土地や建物の賃貸から得た所得 |
譲渡所得 | 土地や建物、株式などの譲渡から得た所得 (※NISAは非課税) |
山林所得 | 所有期間が5年を超える山林の譲渡から得た所得 |
利子所得 | 預貯金の利息や社債の利子 (※NISAは非課税) |
配当所得 | 株式や投資信託の配当金 (※総合課税、申告分離課税、確定申告不要制度によって変わる) |
一時所得 | 賞金や保険の一時金 (※宝くじは非課税) |
雑所得 | 年金や上記に該当しないその他の所得 |
それぞれの所得に適した申告方法を知り、正しい申告を行うことで税務上のトラブルを避けられます。
フリーランスにおける確定申告の必要性
年間に一定以上の所得があるすべての個人は、所得税の確定申告を行う義務があります。フリーランスは個人事業主として、自分の収入と支出に関する情報を国に報告し、正しく税金を納める必要があります。
国民健康保険や国民年金などの社会保障制度を適切に利用するためにも、確定申告が不可欠です。フリーランスとしての事業の信頼性を築く手段にもなります。信頼性が高まれば、金融機関から融資を受けやすくなる、契約の話を進めやすくなるといったメリットが得られます。
フリーランスの確定申告の条件
フリーランスでも確定申告が必要なケースと免除されるケースがあります。
確定申告が必要な条件
以下の条件を満たす場合、確定申告を行う必要があります。
- 自営業者やフリーランスで、経費を引いた事業所得が年間48万円以上の場合
- 給与所得者で、給与所得が年間2,000万円を超える場合
- 給与所得者で、副業が年収20万円を超える場合
- アルバイト・パートで、源泉徴収されておらず年収103万円を超える場合
- 医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税)を申告する場合
事業所得や給与所得以外の所得がある場合、それぞれ確定申告が必要な条件が異なるため、税務署や税理士などの専門家に条件を確認してください。
寄附金控除(ふるさと納税)だけの場合、ワンストップ特例申請の条件(年間の寄附先が5自治体以内)に当てはまっていれば、ワンストップ特例申請をするだけで確定申告は不要です。
確定申告が免除されるケース
確定申告が免除されるケースには以下が挙げられます。
- 所得金額が一定額以下で所得税がかからない非課税状態の場合
- 給与所得者で、年末調整により税金の計算が完了しており、他の所得がない場合
- 年金のみの年間400万円以下で生計を立てており、源泉徴収によって税金が徴収済みの場合
- 医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税)などの適用を受ける必要がない場合
- 事業所得や不動産所得があっても税務署から申告不要と通知されている場合
免除条件は個人の状況によって異なります。上記の条件に当てはまる場合でも、免除が自身に適用されるか否かは税務署に確認してください。
白色申告と青色申告の違い
フリーランスが確定申告をする際は、白色申告か青色申告を選択する必要があります。白色申告と青色申告では税務上の取り扱いが異なり、それぞれメリット・デメリットがあります。自身の事業内容や会計管理の状況を考慮し、適切な申告方法を選択しましょう。
白色申告
フリーランスは白色申告を選ぶことも可能です。白色申告に求められる帳簿は簡易な点が特徴です。手書きの帳簿で十分対応でき、会計ソフトは必要ありません。小規模事業主が経理の手間を少なくしたい場合は、白色申告が適しています。
白色申告では青色申告のような特別な控除は受けられません。基礎控除のみが適用され、純損失の繰越控除の利用はできません。節税を優先する場合は、青色申告の方が適しています。
確定申告の際は、確定申告書と収支内訳書を提出します。白色申告は書類準備が簡単ですが、税務調査のリスクが若干上がるとされています。
青色申告
青色申告はフリーランスにとって節税のメリットがある制度です。最大65万円の青色申告特別控除により、税負担を大幅に減らせる可能性があります。純損失の繰越控除を活用すれば、その年の赤字(控除しきれなかった損失)を翌年に繰り越しすることが可能です。
純損失の繰越控除とは?
純損失とは、事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の4つの所得の損失の金額のうち、損益通算(損失と利益の全体の計算)をしても控除しきれない金額のことです。正確な定義は異なりますが、純損失は赤字の金額と捉えるとイメージしやすいでしょう。青色申告では最大3年、前年の純損失を繰り越して控除することができます。
備品等の一括経費計上においても、30万円未満であれば、年を跨いで分割して経費計上(減価償却)せずに一括で経費計上することができます。家族が事業を手伝っている場合は、給与を経費として計上できる可能性があります。
青色申告を行うためには、事前に税務署への承認申請が必要です。申告の際は、確定申告書と青色申告決算書を使用します。青色申告を選択する場合は、帳簿の記録と保存も厳格に守らなければなりません。帳簿を正確に管理するため、会計ソフトの利用がおすすめです。
フリーランスの節税方法
フリーランスが確定申告時に利用できる節税方法は複数あります。以下の3つの節税方法を詳しく説明します。
- 経費の計上
- 適用できる控除の利用
- 青色申告の選択
経費の計上
事業活動上のさまざまな費用を経費として計上すれば、税金の負担を軽減できます。経費に計上できる費用の例は以下のとおりです。
- 交通費
- 通信費
- 材料費
- 広告宣伝費
- オフィスや自宅での仕事にかかる水道光熱費
- 備品の購入や修理費
- 接待交際費
- 消費税(税込経理方式で納税する場合のみ)
事業活動に直接的に関わる費用はもちろん、オフィスや自宅での仕事にかかる水道光熱費も家事按分によって適切な割合で計上が可能です。
家事按分とは?
家事按分とは、事業とプライベートの両方で使用しているものの費用(家賃や水道光熱費など)について、事業利用比率の分だけ経費に計上することです。青色申告では家事按分をするにあたって事業利用比率の制限がないため、白色申告よりも家事按分による節税がしやすいです。
資産が一定の基準を満たした場合は、減価償却が適用されます。個人事業主の接待交際費については上限がありません。iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済に加入することで、資産運用しながら節税することもできます。
経費を計上する際は、領収書やレシートの管理が重要です。経費を適切に計上するためには、どの経費が認められるかをしっかり理解しておきましょう。
適用できる控除の利用
確定申告におけるさまざまな控除を利用すれば、税金が軽減され、実質的な収入・手取りの増加につながります。控除には、生活状況や社会的な立場に応じたものが設けられています。具体的な控除は、以下のとおりです。
- 基礎控除
- 青色申告特別控除
- 扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除
- 社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除
- 医療費控除
- 寄附金控除(ふるさと納税)
- 小規模企業共済等掛金控除
- 障害者控除、寡婦(夫)控除、ひとり親控除、勤労学生控除
- 住宅ローン控除
- 仕入税額控除(インボイス制度)
控除を利用するためには、必要な書類の準備と適正な申請が大切です。フリーランスは年末調整ができないため、医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税)などを自ら計算して申告する必要があります。控除の詳細に関しては、税務署や税理士などの専門家からアドバイスを受けることをおすすめします。
青色申告の選択
青色申告を選ぶと、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。予定納税や家族従業員への給与の経費計上なども青色申告のメリットです。事業初期や不景気で赤字が発生した場合も、純損失の繰越控除を利用し、将来的な税負担を軽減できる可能性があります。
事業用固定資産(備品等)に関しては、30万円未満であれば一括で経費に計上できます。青色申告を行うためには、事業開始後2か月以内に税務署への申請が必要です。経営状態を把握するために、複式簿記に基づく帳簿の記録も必要です。
フリーランスが確定申告する際の手順
確定申告を正確に行い税務上のトラブルを避けるために、確定申告する際の手順をしっかりと把握しておくことが大切です。フリーランスが確定申告する際の手順について、以下の3つのステップにわけて解説します。
- 必要書類の整理と準備
- 確定申告書の記入
- 確定申告書の提出
必要書類の整理と準備
確定申告を行う際は、事業に関連する書類の整理や準備が大切です。特にフリーランスの場合、一年間の収入や経費を正しく申告するために取引記録の収集が求められます。
具体的に必要な書類は、以下のとおりです。
- 確定申告書
- 青色申告決算書:青色申告の場合のみ
- 収支内訳書:白色申告の場合のみ
- 本人確認書類のコピー:マイナンバーカード、運転免許証など
- 収入証明書:給与明細、源泉徴収票、所得証明書、課税証明書など
- その他所得の証明書類:不動産所得、配当所得など
- 経費の証拠書類:請求書、領収書、支払証明書、レシートなど
- 控除証明書:保険、年金など
- 銀行口座の取引明細書や借入金に関する書類
- 前年度の確定申告書の控え:参考資料として
書類をしっかりと準備することで、確定申告時にスムーズに申告作業を進められます。
確定申告書の記入
確定申告書を作成する際は、必要事項をどこにどのように記入するかを把握し、記入ミスがないように注意しましょう。収入や経費、控除を正確に計算し、結果を基に所得金額を導き出します。税額は計算式を用いて算出します。
確定申告には白色申告と青色申告の2種類があり、提出書類が異なるため注意しましょう。収入証明や経費明細などの添付書類が求められる場合もあるため、事前に書類の準備をすることも大切です。基礎控除や社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除などの控除がある場合は、適用項目に記入します。
確定申告で電子申告(e-Tax)を利用する場合は、オンラインで入力・送信します。手書きで提出する場合は、ペンで正確に記入しましょう。
確定申告書の提出
確定申告書の提出期間は毎年2月16日から3月15日までと決まっています。期間を逃すと罰則が科される可能性があるため、注意が必要です。
提出方法は、電子申告(e-Tax)、郵送、直接税務署への提出の3つがあります。電子申告(e-Tax)を選ぶ場合は、電子証明書が必要です。郵送や直接提出を選ぶ場合は、所轄の税務署宛てに必要書類を送付するか、開庁時間内に税務署を訪問します。
納税額が確定した後は、指定された期限内に納税する必要があります。還付が発生する場合は、還付申告を通じて返金を受けられます。申告内容に誤りがあった場合は、更正の請求や修正申告により訂正が可能です。確実な提出を心がけ、適正な納税を行いましょう。
まとめ
フリーランスにとって、確定申告は避けては通れない重要なプロセスです。所得の種類によって税額が異なり、条件によっては確定申告が免除されることもあります。自身がどのケースに当てはまるかを把握することが重要です。
白色申告と青色申告では、節税効果や記録の要件が異なります。選択によって、税務上の利点も異なります。経費を適切に計上し、利用できる控除を活用することで節税が可能です。
確定申告の手順としては、必要な書類を準備し、確定申告書を正確に記入して提出します。その後、確定した所得税をはじめとする各種税金を期限内に納税します。スムーズに申告・納税を行い、税務上のメリットを最大限に享受するために、確定申告の基礎知識と申告手順を把握しておきましょう。