事業を始めるとき、何から手をつければいいのか迷いますよね。
開業届の提出は、事業を始めるための第一歩です。
この記事では、開業届を提出するまでの手順、記入項目ごとの書き方から開業届の出し方まで徹底サポートします。記事を読めば、開業届をスムーズに提出できるでしょう。
開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。開業届の提出期限は、事業を始めた日から1か月以内です。未提出でも罰則はありませんが、税務上の手続きに影響を与えるため、期限内の届出を推奨します。
開業届を提出するまでの手順
はじめに、開業届を提出するまでの手順について解説します。一連の手順を知っておくことで、目的までの道筋が明確になり、スムーズに手続きを進めることができます。
- 開業届で提出する書類を把握する
- 開業届の出し方を決める
- 開業届の出し方に合わせて必要な準備をする
- 開業届を作成する
- 開業届を提出する
まず開業届で提出する書類を把握してください。「個人事業の開業・廃業等届出書」は必須です。節税メリットが大きい「青色申告承認申請書」も合わせて提出するのがおすすめです。
もし青色申告が難しいと感じた場合は、「青色申告の取りやめ届出書」を提出して、後から白色申告に戻すこともできます。開業届で必要な書類の詳細については、以下の記事で解説しています。
次に開業届の出し方を決めてください。開業届の出し方によって必要な準備が変わります。開業届には複数の出し方があり、税務署の窓口、郵送、電子申告(e-Tax)、開業支援サービス(freee開業など)での提出ができます。開業届は、一番簡単で手間がかからない「開業支援サービス」で提出する方法がおすすめです。
ここからは手順に沿って、以下の内容を順番に解説していきます。
- 開業届の出し方を決める
- 開業届の出し方に合わせて必要な準備をする
- 開業届を作成する(開業届の書き方)
開業届の出し方を決める
開業届の出し方には、以下の方法があります。
- 税務署の窓口で直接提出する
- 郵送で提出する
- 電子申告(e-Tax)でオンライン提出する
- 開業支援サービスでオンライン提出する【おすすめ!】
それぞれのメリット・デメリットも解説するため、自分に合った出し方を選んでください。
提出先は、対象の税務署を間違えないよう事前に確認しておきましょう。自分が住んでいる地域の税務署は、国税庁のウェブサイト(国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」)で簡単に確認することができます。
令和7年1月から、税務署の申告書等の控えに対する「収受日付印の押なつ(受付印)」が廃止されます。廃止以降は、以下のいずれかの方法で提出事実や提出年月日を確認してください。
- 電子申告(e-Tax)した場合は、e-Taxの受信通知
- 申告書等情報取得サービス(オンライン請求のみ)
- 保有個人情報の開示請求
- 税務署での申告書等の閲覧サービス
- 納税証明書の交付請求
税務署の窓口で直接提出する
開業届は、所轄税務署の窓口で直接提出することができます。税務署に行く際には、本人確認書類と開業届を持参しましょう。税務署によって開庁時間が異なるため、事前に確認してください。
税務署の窓口で直接提出する方法には、以下のメリットがあります。
- 窓口で質問や相談ができる
- 開業届の記入に不備があった場合、その場で修正して再提出できる
税務署の窓口で直接提出する方法には、以下のデメリットがあります。
- 自宅と税務署を往復する時間やコストがかかる
- 税務署の開庁時間内に提出する必要がある
- 忘れ物があると手続きできない
近所に税務署があり開庁時間内に提出できる方は、税務署の窓口で直接提出する方法も選択肢の一つです。
郵送で提出する
開業届は郵送で提出することができます。郵送する場合は、封筒と返信用封筒、適切な金額の切手、開業届、本人確認書類のコピーを準備します。封筒の宛先に所轄税務署の所在地を正確に記載することが重要です。郵送後は、返信用の封筒で開業届の控えが送られてきます。
簡易書留を利用すると、書類が税務署に届いたか確認できます。大切な書類を送るため、簡易書留などの記録が残る郵送方法を選びましょう。
郵送で提出する方法には、以下のメリットがあります。
- 税務署に行く必要がない
郵送で提出する方法には、以下のデメリットがあります。
- 自宅と郵便局を往復する時間やコストがかかる
- 郵便局の営業時間内に提出する必要がある
- 郵送代がかかる
近所に税務署がなく電子申告(e-Tax)や開業支援サービスの利用に抵抗がある方は、郵送で提出する方法も選択肢の一つです。
電子申告(e-Tax)でオンライン提出する
開業届は電子申告(e-Tax)でオンライン提出することができます。電子申告(e-Tax)でオンライン提出する場合は、以下の手順を参考にしてください。Macのパソコンでは、電子申告(e-Tax)による開業届の提出はできません。
- Windowsのパソコン、インターネット環境、マイナンバーカード、ICカードリーダー、利用者識別番号、電子証明書を準備する
- e-Taxソフトのダウンロードコーナーに従って、ダウンロード・インストールする
- 開業届を選択し、必要事項を入力する
- 電子署名を行い、開業届を送信する
- 提出完了の受信通知が届き、送信したデータとセットで保管する
電子申告(e-Tax)でオンライン提出する方法には、以下のメリットがあります。
- 自宅で提出できる
- 移動代や郵送代がかからない
- 開庁時間や営業時間に縛られない
- 電子データなので書類での管理が不要
電子申告(e-Tax)でオンライン提出する方法には、以下のデメリットがあります。
- WindowsのパソコンやICカードリーダーなど必要なものが多い
- 事前準備が多く、IT慣れしていないとハードルが高い
IT慣れしていて自宅で完結したい方は、電子申告(e-Tax)でオンライン提出する方法も選択肢の一つです。ただし、自宅で完結したいのであれば、後述する開業支援サービスの方が簡単で手間がかからないためおすすめです。
開業支援サービスでオンライン提出する【おすすめ!】
開業届は開業支援サービスでオンライン提出することができます。開業支援サービス経由で電子申告(e-Tax)を使用しますが、利用者の私たちが電子申告(e-Tax)を意識する必要はほとんどありません。
Macのパソコンでも提出できます。ICカードリーダーも必要ありません。「青色申告承認申請書」などの関連書類も合わせて提出可能です。
開業支援サービスでオンライン提出する方法には、以下のメリットがあります。
- 自宅で提出できる
- 移動代や郵送代がかからない
- 開庁時間や営業時間に縛られない
- 電子データなので書類での管理が不要
- 電子申告(e-Tax)より簡単で手間がかからない
開業支援サービスでオンライン提出する方法には、以下のデメリットがあります。
- 会員登録をする必要がある(登録から提出まで無料)
簡単で手間をかけずに自宅で完結したい方は、開業支援サービスでオンライン提出する方法も選択肢の一つです。電子申告(e-Tax)のようにIT慣れしている必要もありません。会員登録をする必要はありますが、開業支援サービスは会計ソフトを扱う企業が提供しており、今後の確定申告でも関連サービスを利用する可能性が高いです。
開業届の出し方に合わせて必要な準備をする
「税務署の窓口」または「郵送」で提出する場合は、以下のいずれかの方法で開業届に必要な書類を入手してください。
- 国税庁のウェブサイトから必要な書類をダウンロードする
- 最寄りの税務署で書類を受け取る
国税庁のウェブサイト(国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」)から、開業届をダウンロードすることができます。ダウンロード後は適宜、電子データ上で入力するか、印刷して紙媒体で記入を進めてください。
最寄りの税務署の窓口から、開業届を入手することもできます。税務署の開庁時間は平日に限られているため、訪問前に時間を確認しましょう。
青色申告を選択する場合は「青色申告承認申請書」の提出も必要です。必要な書類をリストアップし、一式がそろっていることを確認してください。
「電子申告(e-Tax)」または「開業支援サービス」で提出する場合は、書類の入手は不要ですが、事前準備やサービスの手順に沿った手続きが必要となります。
- 電子申告(e-Tax)で申請する場合、公式の手順に沿って事前準備をする
- 開業支援サービスで申請する場合、サービスの手順に沿って手続きを進める
開業届を作成する(開業届の書き方)
開業届を作成するために、記入項目ごとの書き方を明確にします。開業届の記入項目は以下の通りです。
- 「提出先」と「提出日」
- 「納税地」と「上記以外の住所地・事業所等」
- 「氏名」と「生年月日」と「個人番号」
- 「職業」と「屋号」
- 「届出の区分」
- 「所得の種類」と「開業・廃業等日」
- 「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」
- 「事業の概要」
- 「給与等の支払の状況」
- 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」
記入漏れや記入ミスがないように、1つずつ確実に記入しましょう。実際の提出書類の項目名に沿って解説します。
「提出先」と「提出日」
開業届の「提出先」とは、「税務署長」と記載されている左側の記入欄のことです。自分が住んでいる地域の税務署は、国税庁のウェブサイト(国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」)で簡単に確認することができます。念のために、一度確認しておきましょう。
「提出日」とは、「提出先」のすぐ下に記載されている「年月日提出」の記入欄のことです。「生年月日」欄が和暦であるため、和暦での記入をおすすめします。提出した日を記入するため、提出準備が整ってから一番最後に記入すると提出日がずれる心配もなくなります。ただし、記入忘れのないように注意してください。
「納税地」と「上記以外の住所地・事業所等」
「納税地」は、住所地・居所地・事業所等から該当するものを選択(チェック)します。選択した納税地の種別に合わせて、納税地を記入してください。自宅で事業を行っている場合は、住所地を選択して、自宅の住所を記載します。電話番号(TEL)には、スマホの携帯番号を記入しても大丈夫です。
- 住所地:国内にある自宅の住所
- 居所地:国内に住所がない場合の居所
- 事業所等:事業所の所在地
「上記以外の住所地・事業所等」については、事業所が複数ある場合は、最も大きな事業所がある所在地を納税地として記入します。納税地以外に住所地・事業所等がない場合は記入不要です。
納税地が変わった場合は、税務署に「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」の提出が必要です。提出期限はありません。開業支援サービスはサービス対象外です。国税庁のウェブサイト(国税庁「A1-6 所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する手続」)からダウンロードすることができます。
「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」を提出する代わりに、確定申告の際に、申告書に異動または変更後の納税地を記載して提出することも可能です。
「氏名」と「生年月日」と「個人番号」
続いて「氏名」と「生年月日」と「個人番号(マイナンバー)」を記入します。
- 氏名:「フリガナ」はカタカナ表記で記入
- 生年月日:和暦で記入
- 個人番号(マイナンバー):マイナンバーカードの裏側に記載されている12桁の番号を記入
以前の届出書の形式には「氏名」に押印欄がありましたが、現在の形式からは押印欄はなくなったため、開業届に押印は不要です。
「職業」と「屋号」
「職業」欄には、事業の内容に合った職業を記入します。例えば、ITエンジニア、経営コンサルタント、Webデザイナーなどです。特に記入のルールはありませんが、なるべく伝わる表現で記入することを意識しましょう。「職業」や「事業の概要」は事業税に関わるため、認識のズレが発生しないよう正確に記入することが重要です。
個人事業主は、地方税法等で定められた事業(法定業種)を行う場合、個人事業税が発生します。法定業種については、東京都主税局の一覧表を参考にしてください(東京都主税局「個人事業税 4 法定業種と税率」)。
請負業は個人事業税の対象です。業種にもよりますが、請負契約ではなく準委任契約で事業を行う個人事業主は、課税対象外となる可能性があります。都道府県によって課税対象の判断が異なるため、例えば「システム開発業務」であれば、請負契約であっても課税対象外となる可能性があります。
「屋号」欄については、記入は任意のため未記入でも問題ありません。国税庁の定義より、屋号とは「個人事業者の方が使用する商業上の名のこと」です。例えば、事業用の銀行口座を開設する際に、屋号を付けることができます。屋号は自由に決めることができますが、以下の表現は法律で禁止されているため注意してください。
- 法人と誤解される表現:「会社」「法人」「銀行」など
- 商標登録されている文字
「届出の区分」
「届出の区分」では、開業届として提出する場合は「開業」を選択してください(丸で囲んでください)。開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。開業届の提出後も、以下の場合はその度に「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出が必要になるため覚えておきましょう。
- 新たな事業を開業する場合
- 事業所を新設・増設・移転・廃止する場合
- 事業を廃業する場合
「所得の種類」と「開業・廃業等日」
「所得の種類」は、不動産所得・山林所得・事業(農業)所得から該当する所得を選択(チェック)します。以下の定義を参考にしてください。多くの場合は「事業(農業)所得」を選択(チェック)することになるでしょう。
- 不動産所得:土地や建物の賃貸から得た所得
- 山林所得:所有期間が5年を超える山林の譲渡から得た所得
- 事業(農業)所得:自営業や個人事業(不動産所得・山林所得を除く)から得た所得
「開業・廃業等日」には「届出の区分」で選択した区分に対する日付を記入します。「届出の区分」で開業を選択した場合は、事業を始めた日を記入してください。「生年月日」欄が和暦であるため、和暦での記入をおすすめします。
「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」
「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」では、2つの項目に対して有か無を選択(チェック)します。
- 「青色申告承認申請書」又は「青色申告の取りやめ届出書」
- 消費税に関する「課税事業者選択届出書」又は「事業廃止届出書」
「青色申告承認申請書」も合わせて提出する場合は、該当する項目の「有」を選択(チェック)してください。節税メリットが大きいため、合わせて提出するのがおすすめです。もし青色申告での確定申告が難しいと感じた場合は、「青色申告の取りやめ届出書」を提出して、後から白色申告に戻すこともできます。
「課税事業者選択届出書」は、消費税の免税事業者が課税事業者になることを選択する場合の手続です。課税事業者になるメリット・デメリットについては、インボイス制度に対する理解も重要になります。そのため、開業届を提出するタイミングでは、該当する項目の「無」を選択(チェック)して、後から検討する方がスムーズでしょう。
インボイス制度の詳細については、以下の記事で解説しています。
「事業の概要」
「事業の概要」には「職業」欄で記入した職業の具体的な事業内容を記入してください。事業税に関わる項目のため、「職業」欄の説明と重複しますが再度解説します。
「職業」欄と同じく特に記入のルールはありませんが、なるべく伝わる表現で記入することを意識しましょう。事業税に関わる項目のため、認識のズレが発生しないよう正確に記入することが重要です。
個人事業主は、地方税法等で定められた事業(法定業種)を行う場合、個人事業税が発生します。法定業種については、東京都主税局の一覧表を参考にしてください(東京都主税局「個人事業税 4 法定業種と税率」)。
請負業は個人事業税の対象です。業種にもよりますが、請負契約ではなく準委任契約で事業を行う個人事業主は、課税対象外となる可能性があります。都道府県によって課税対象の判断が異なるため、例えば「システム開発業務」であれば、請負契約であっても課税対象外となる可能性があります。
「事業の概要」は開業届の記入項目の中でも一番曖昧で悩みやすい項目です。そのため、筆者の記入例をご紹介します。筆者は開業届から青色申告、納税までトラブルなく事業運営しておりますが、筆者の記入例が正しいという保証にはならないため、あくまで参考情報として捉えてください。
- 筆者が「事業の概要」欄に記入した内容(原文のまま)
- ITサービス・ソフトウェア開発(業務委託契約)
原文のままですが「業務委託契約」の定義は「請負契約」を含むため、主張するなら「準委任契約」と記載した方が良かったです。契約形態まで明記する必要性を感じなければ記載不要です。最終的には、確定申告書の職業欄や事業税の欄で、個人事業税の課税対象かどうかを判断されます。
「給与等の支払の状況」
「給与等の支払の状況」は、従業員がいる場合に記入が必要です。
- 区分:「専従者」は家族の従業員、「使用人」は家族以外の従業員を意味する
- 従事員数:区分ごとの従業員の人数を記入する
- 給与の定め方:日給や月給などの給与体系を記入する
- 税額の有無:区分ごとの従業員全員に納税すべき税額がない場合は「無」、それ以外の場合は「有」を選択(チェック)する
- 給与支払を開始する年月日
家族を雇っている場合は、開業届のほかに「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。開業届を提出した後に従業員を雇う場合は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出が必要です。それぞれ国税庁のウェブサイトからダウンロード可能であり、開業支援サービスも対応しています。
国税庁「A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続」
国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」は、従業員がいる場合のみ有無を検討して選択(チェック)します。従業員がいない場合は「無」を選択(チェック)してください。
源泉徴収義務者は、雇った人に支払う給与や報酬に応じて、所得税および復興特別所得税を差し引いて国に納税する義務があります。通常、源泉所得税の納税は毎月行わなければなりません。ですが「源泉所得税の納期の特例」という制度によって、源泉所得税の納税を年2回に変更することができます。
「有」を選択(チェック)する場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出が必要です。国税庁のウェブサイトからダウンロード可能であり、開業支援サービスも対応しています。「源泉所得税の納期の特例」の適用条件や申請手続きについては、以下の記事で解説しています。
国税庁「A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」
開業届を出すメリット
開業届を出すことで、主に以下のメリットが得られます。
- 青色申告の特典が受けられる
- 事業用銀行口座が開設できる
- 社会的信用を獲得できる
青色申告の特典が受けられる
開業届と合わせて青色申告承認申請書を提出して承認されると、青色申告の特典が受けられます。納税額の軽減や損失の繰越が可能になるため、青色申告は大きなメリットです。
具体的な特典は以下のとおりです。
- 青色申告特別控除が受けられるため、納税額が軽減される
- 損失が出た場合、最大3年間繰り越すことができる
- 家族への給与が損金に算入できるので、経費として扱うことができる
- 30万円未満の固定資産を一括償却できる
上記の特典により、経営の安定化と税負担の軽減が期待できます。帳簿の信頼性が高まることで、金融機関からの融資が受けやすくなる利点もあります。青色申告の特典を活用することで、事業の成長に役立てることができるでしょう。
事業用銀行口座が開設できる
事業用銀行口座の開設は、ビジネスをするうえで非常に重要です。「屋号+個人名」の名義で銀行口座を作成することができ、事業収入と個人収入を分けて管理できます。
事業用銀行口座の開設には、他にも以下のメリットがあります。
- 経理処理がシンプルになり、ビジネス全体の透明性が高まる
- 信用力が向上し、取引先からの信頼を得やすくなる
- 事業資金の融資を受けやすくなり、資金繰りが円滑に進むことが期待できる
さまざまな観点から、事業用銀行口座の開設はおすすめです。ビジネスの運営を効率化し、将来的な成長を支える助けになります。
社会的信用を獲得できる
社会的信用を獲得できると、以下のようなメリットがあります。
- 信用力の向上
- 融資を受けやすくなる
- 社会的な認知度が高まる
- 事業の安定性が評価されやすくなる
開業届を提出することで、法的にも認められた事業者として評価されるため、長期的な取引や契約が結びやすくなります。事業の安定性がさらに向上し、長期的な成長が期待できるでしょう。
開業届提出後の手続き
開業届を提出した後に必要な手続きは、以下のように複数あります。
- 青色申告承認申請書の手続き
- 青色事業専従者給与の手続き
- 該当する場合に必要な手続き
- その他の許認可や届出
上記の手続きを適切に行うことで、事業が円滑に進みます。
青色申告承認申請書の手続き
青色申告承認申請書の提出は、個人事業主が青色申告を希望する場合に必要です。提出期限は原則として開業日から2ヶ月以内です。開業届と同時に提出することもできます。所轄の税務署に提出しましょう。青色申告を行うと、青色申告特別控除が受けられるなどのメリットがあります。
青色申告承認申請書を提出するには、事前に青色申告の帳簿を整えることが必要です。帳簿を整えることで、青色申告が承認される基準を満たせます。提出しない場合は、白色申告です。白色申告では青色申告の特典が受けられないため、事業主にとっては大きなデメリットと言えます。
提出後、税務署からの承認通知はありませんが、不備があれば承認されない可能性があるため、書類の記入や帳簿の整備には注意が必要です。
青色事業専従者給与の手続き
青色事業専従者給与の手続きは、家族を従業員として雇い、給与を経費として計上する際に必要です。届出は所轄税務署に提出します。提出期限は、原則として対象者を従業員として雇い始めた日から2ヶ月以内です。届出後は、届出内容に基づいた給与支払を行い、毎年の青色申告書に記載する必要があります。
手続きとしては「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出します。届出書には、専従者の氏名、給与額、業務内容などを記載してください。
変更がある場合は速やかに税務署に届け出ることが重要です。届出が遅れた場合、給与は経費として認められない可能性があるため注意が必要です。
該当する場合に必要な手続き
該当する場合に必要な手続きは以下のとおりです。
- 消費税課税事業者選択届出書
- 労働保険の加入手続き
- 社会保険の加入手続き
事業の売上が1,000万円を超える場合は消費税の納税義務が生じるため、消費税課税事業者選択届出書も提出してください。売上が1,000万円以下の場合でも、インボイス制度などを考慮して自ら課税事業者を選択する場合は提出が必要です。早めに手続きを進めておきましょう。
従業員を雇用する場合は労働保険(労災保険・雇用保険)の加入手続きを行います。労働保険に加入することで、従業員が安心して働ける環境が整います。社会保険の加入手続きも同様に重要です。従業員が健康保険や年金に加入するための手続きを早めに行いましょう。
その他の許認可や届出
業種によっては特定の許認可や免許、届出が必要です。例えば飲食店を開業する場合、食品衛生法に基づく飲食店営業許可が必要です。許可がないと営業を開始できません。他にも、美容師免許や薬局開設許可など、業種ごとに求められる許可があります。
具体的には、以下のような許認可が必要です。
- 古物商許可
- 飲食店営業許可
- 美容師免許
- 薬局開設許可
- 医療機関の開設許可
- 建設業許可
- 倉庫業登録
- 宅地建物取引業免許
- 酒類販売業免許
上記の許可を取得することで、法的に問題なく事業を運営できます。許可を取得することで顧客からの信頼も得やすくなります。
許認可を取得するためには、各業種に応じた特定の条件や手続きを満たすことが必須です。クリアすることで、スムーズに事業を展開できます。
他にも、事業を運営する場所によっては地方自治体での届出も必要です。地域ごとの規制や条例に従うことが求められます。地域社会とも良好な関係を保ちながら事業を進められます。
許認可や届出をしっかりと行うことで、法的リスクを回避し、安心して事業を運営することが可能です。事業を始める前に、必要な許認可や届出について十分に調査し、適切な手続きを進めることが重要です。
開業届に関するよくある疑問
開業届に関するよくある疑問を以下にまとめました。
- 開業届の提出を忘れたときの罰則はある?
- 副業として開業届を提出する際の注意点は?
- 開業届提出後に納税地や事業内容が変わった場合は?
開業届の提出を忘れたときの罰則はある?
開業届の提出を忘れた場合、罰則はありません。罰金も科されません。しかし、開業届を提出しないと青色申告ができず、白色申告のままとなります。青色申告にはさまざまな特典があるため、受けられないのは大きなデメリットです。
例えば、青色申告では最大65万円の青色申告特別控除が受けられるほか、赤字を3年間繰り越して税負担を軽減することができます。しかし開業届の提出を忘れた場合、特典を受けることができません。
開業届を提出しないことは社会的信用の低下にもつながる可能性があります。事業用銀行口座の開設や融資による事業の資金調達が困難になることも考えられます。
副業として開業届を提出する際の注意点は?
副業として開業届を提出する際の注意点は以下のように多岐にわたります。
- 開業届の提出
- 副業でも開業届を提出する必要があります。
- 青色申告承認申請書の提出
- 青色申告を利用する場合は、開業届とともに青色申告承認申請書も提出しましょう。経費として認められる範囲が広がります。
- 確定申告
- 副業としての事業所得が年間20万円を超える場合は確定申告を行いましょう。税務署に自分の収入を正しく報告するために重要です。
- 就業規則確認
- 就業規則で副業が禁止されている場合があるため、事前に確認することが大切です。
- 社会保険と税金の負担
- 所得金額によっては、社会保険や税金の負担が増える可能性もあります。
- 税務処理
- 異なる収入源がある場合、税務処理が複雑になるため、事前にしっかりと計画を立てることが重要です。事業の継続性を確保し、計画的に運営することも成功の鍵です。
上記の注意点を理解し、適切に対応することで、副業としての事業を円滑に進めることができます。
開業届提出後に納税地や事業内容が変わった場合は?
納税地が変わった場合、開業届の再提出が必要です。移転から1ヶ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を再提出してください。
事業内容が変わった場合、開業届の再提出は必要ありません。確定申告の職業欄に変更後の職業を記載してください。ただし、事業内容の変更に伴い、関連する許認可や届出も変更が必要な場合があるので注意が必要です。大きな変更がある場合は、専門家に相談することも検討しましょう。
まとめ
事業をスムーズに始めるためには、開業届を提出するまでの手順を理解することが重要です。開業届の出し方によって必要な準備が変わります。
- 税務署の窓口で直接提出する
- 郵送で提出する
- 電子申告(e-Tax)でオンライン提出する
- 開業支援サービスでオンライン提出する
それぞれの出し方のメリット・デメリットを把握して、自分に合った出し方を選択しましょう。
書類またはオンライン提出の準備ができた後は、開業届の記入項目ごとの書き方を理解して、開業届を作成します。提出先の税務署の確認方法、「職業」や「事業の概要」と事業税の関係、屋号の有無や禁止事項など、意外と知っておくべき事前知識があるため、理解を深めて記入漏れや記入ミスがないよう正確に記入してください。
開業届の提出期限は、事業を始めた日から1か月以内です。期限内に提出を済ませ、正式な個人事業主として自信を持って事業をスタートしましょう。