- 「所得税の青色申告承認申請書」って何?どうやって書くの?
- 「所得税の青色申告承認申請書」の提出期限や提出方法を知りたい
上記のように悩んでいる方は多いです。
この記事では、「所得税の青色申告承認申請書」の正しい書き方から提出期限・提出方法まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。記事を読めば、正確に記入・提出ができ、青色申告で節税対策をはじめられます。
貴重な節税のチャンスを逃さないために、「所得税の青色申告承認申請書」の具体的な書き方と手続きを理解しましょう。
法人向けの法人税を対象とした「青色申告の承認申請書」とは異なる申請書であるため注意してください。
所得税の青色申告承認申請書とは
「所得税の青色申告承認申請書」とは、フリーランスや個人事業主が青色申告をする(税制優遇を受ける)ために必要な申請書です。所得税の青色申告承認申請書を提出すると、確定申告の申告方法が白色申告から青色申告に切り替わります。
青色申告のメリットは、最大65万円の青色申告特別控除を受けられる点です。他にも、赤字を3年繰り越すことが可能で、家族を雇った場合の給与支払いが経費として認められます。青色申告のデメリットは、記帳や確定申告の手続きに手間がかかる点です。
もし青色申告が難しいと感じた場合は「青色申告の取りやめ届出書」を提出して、後から白色申告に戻すこともできます。
所得税の青色申告承認申請書は、一定の形式が定められているため、必要事項を適切に記入しましょう。
所得税の青色申告承認申請書の書き方
所得税の青色申告承認申請書を作成するために、記入項目ごとの書き方を明確にします。記入項目は以下の通りです。
- 「提出先」と「提出日」
- 基本情報
- 青色申告を開始する年分
- 「事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地」
- 「所得の種類」
- 青色申告承認の取り消しまたは取りやめの有無
- 「本年1月16日以後新たに業務を開始した場合、その開始した年月日」
- 「相続による事業承継の有無」
- 「簿記方式」
- 「備付帳簿名」
- 「その他」
- 「関与税理士」
記入漏れや記入ミスがないように、1つずつ確実に記入しましょう。実際の提出書類の記入項目に沿って解説します。
「提出先」と「提出日」
所得税の青色申告承認申請書の「提出先」とは、「税務署長」と記載されている左側の記入欄のことです。自分が住んでいる地域の税務署は、国税庁のウェブサイト(国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」)で簡単に確認することができます。念のために、一度確認しておきましょう。
「提出日」とは、「提出先」のすぐ下に記載されている「年月日提出」の記入欄のことです。「生年月日」欄が和暦であるため、和暦での記入をおすすめします。提出した日を記入するため、提出準備が整ってから一番最後に記入すると提出日がずれる心配もなくなります。ただし、記入忘れのないように注意してください。
基本情報
所得税の青色申告承認申請書に記入する基本情報は、以下のとおりです。
- 納税地
- 上記以外の住所地・事業所等
- 氏名
- 生年月日
- 職業
- 屋号
以前の申請書の形式には「氏名」に押印欄がありましたが、現在の形式からは押印欄はなくなったため、所得税の青色申告承認申請書に押印は不要です。
基本情報については開業届と項目が被っているため、開業届を提出済みの場合は、開業届に記入した内容と合わせておきましょう。開業届を未提出の場合は、以下の記事で基本情報の書き方も解説しているため参考にしてください。
青色申告を開始する年分
青色申告を開始する年分とは、「令和_年分以後の所得税の申告は、青色申告書によりたいので申請します」という文章の記入欄のことです。例えば、令和6年の分から青色申告を開始したい場合は、令和6年と記載します。その年の確定申告自体は、翌年の確定申告期間に行います。
所得税の青色申告承認申請書には提出期限があるため、今年の分から開始を希望する方は注意が必要です。
- 1月1日〜1月15日に個人事業を開始
- 申告をする年の3月15日までに提出する
- 1月16日〜12月31日に個人事業を開始
- 事業を開始した日から2ヶ月以内に提出する
すでに事業を行っており、白色申告から青色申告に変更する場合は、青色申告を希望する年の3月15日が期限です。例えば、令和6年分の確定申告を青色申告に変更したい場合は、令和6年3月15日までに所得税の青色申告承認申請書を提出しなければなりません。
「事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地」
「事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地」には、複数の事務所や店舗がある場合に、名称と所在地を記入します。
名称に悩む場合は「〇〇事業所」「〇〇営業所」「〇〇支店」といった形式の名称を参考にしてください。所在地の記入欄には、「納税地」や「上記以外の住所地・事業所等」と同様に、郵便番号と電話番号も記載しておきましょう。
「所得の種類」
「所得の種類」では、該当する所得を選択(チェック)します。
- 事業所得:自営業や個人事業(不動産所得・山林所得を除く)から得た所得
- 不動産所得:土地や建物の賃貸から得た所得
- 山林所得:所有期間が5年を超える山林の譲渡から得た所得
「事業所得」「不動産所得」「山林所得」以外の所得について青色申告することはできません。他にも以下の所得があります。それぞれ税金の計算方法や控除の適用が異なります。
- 給与所得:給料や賞与
- 退職所得:退職金や一時払いの老齢給付金
- 譲渡所得:土地や建物、株式などの譲渡から得た所得
- 利子所得:預貯金の利息や社債の利子
- 配当所得:株式や投資信託の配当金
- 一時所得:賞金や保険の一時金
- 雑所得:年金や上記に該当しないその他の所得
青色申告承認の取り消しまたは取りやめの有無
過去に青色申告承認の取り消しや取りやめがあった場合は「有」を選択(チェック)して、日付を記入します。「生年月日」欄が和暦であるため、和暦での記入をおすすめします。青色申告承認の取り消しや取りやめから1年間は再申請ができないため、注意してください。初めて青色申告をする方は「無」を選択(チェック)します。
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出して、青色申告から白色申告に戻すこともできます。その後、白色申告から青色申告に戻したい場合は、再度「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。
「本年1月16日以後新たに業務を開始した場合、その開始した年月日」
その年の1月16日以後に開業した(事業を開始した)場合のみ、開業日を記入してください。「生年月日」欄が和暦であるため、和暦での記入をおすすめします。すでに開業届を提出している場合は、開業届の「開業・廃業等日」と年月日が合っていることを確認しておきましょう。今年の分から青色申告を希望する方は、開業日から2ヶ月以内に提出する必要があります。
「相続による事業承継の有無」
事業継承とは、事業者が自身の事業を後継者に引き継ぐことです。相続による事業継承の場合は、「有」を選択(チェック)して、相続開始年月日と被相続人の氏名を記入します。被相続人とは、相続される人のことであり、亡くなった人のことです。相続以外で事業を継承した方、新たに事業を開始した方は「無」を選択(チェック)します。
「生年月日」欄が和暦であるため、「相続開始年月日」も和暦での記入をおすすめします。
「簿記方式」
簿記方式では、以下の選択肢から自分に合った方式を選択(チェック)します。
- 複式簿記:仕訳という記帳方法に従って、取引、資産、負債を帳簿に記録する方式
- 簡易簿記:収入と支出を内訳ごとに帳簿に記録する方式。単式簿記
- その他
「その他」という選択肢がありますが、基本的に複式簿記か簡易簿記を選択(チェック)します。所得税の青色申告承認申請書を提出した後に簿記方式を変更したい場合、再提出の必要はありません。確定申告時に提出する書類によって簿記方式が判断されます。
簿記方式は、青色申告特別控除の控除額の条件となっている重要な項目です。複式簿記では最大65万円、簡易簿記では最大10万円の特別控除が適用されます。控除額が大きい分、複式簿記には簿記3級以上の知識が必要です。
帳簿を作成する際には、法的な要件の遵守が不可欠です。帳簿は7年間保存しておく必要があります。複式簿記では貸借対照表や損益計算書の作成が要求され、単式簿記の場合は収支内訳書の作成が要求されます。どちらの方式を選択したとしても、情報の正確性と整合性を保つことが重要です。
「備付帳簿名」
「備付帳簿名(そなえつけちょうぼめい)」では、青色申告のために日々の取引を記録する帳簿名を選択(チェック)します。各帳簿には特定の役割が与えられており、役割によって使い分けるのが一般的です。すべて使う必要はなく、自分の事業に合わせて必要そうな帳簿を選べば問題ありません。
備付帳簿名の選択肢は以下のとおりです。
- 現金出納帳:現金の入出金を記録する帳簿。出納(すいとう)は入出金のこと
- 売掛帳:売掛金(未回収の売上)を記録する帳簿
- 買掛帳:買掛金(未払いの仕入)を記録する帳簿
- 経費帳:仕入以外の経費を記録する帳簿
- 固定資産台帳:建物や車両、備品などの固定資産を記録する帳簿
- 預金出納帳:銀行口座の入出金を記録する帳簿
- 手形記入帳:受取手形(売上の受取を約束する証書)、支払手形(支払を約束する証書)を記録する帳簿
- 債権債務記入帳:債権(請求する権利)と債務(履行する義務)を記録する帳簿
- 総勘定元帳:すべての取引を勘定科目(内訳の項目)ごとに記録する帳簿
- 仕訳帳:すべての取引を日付順に記録する帳簿
- 入金伝票:現金の入金に関する取引を記録する伝票
- 出金伝票:現金の出金に関する取引を記録する伝票
- 振替伝票:銀行振込など現金以外の取引を記録する伝票
- 現金式簡易帳簿:現金の収入と支出を簡易的に記録する帳簿
- その他
上記の帳簿は、税務申告における重要な資料となります。帳簿がしっかりと管理されていれば、税務調査が行われた際にも事業の経済活動を適切に説明するための証拠として機能します。
65万円の青色申告特別控除を受けるためには、主要簿である「仕訳帳」と「総勘定元帳」の作成が必須です。
「その他」
その他参考事項の「その他」には、特記事項があれば記載してください。無理に書く必要はありませんが、例えば以下のような状況にある方は、経緯や補足を記載しておきましょう。
- 青色申告承認の取り消しまたは取りやめの履歴がある
- 相続による事業承継がある
- 相続以外で事業継承がある
「関与税理士」
「関与税理士」の欄は、顧問税理士(顧問契約を結んだ税理士)に所得税の青色申告承認申請書を依頼した場合のみ、税理士本人が氏名、住所、電話番号を記入する項目です。自分で作成した場合は記入不要です。
所得税の青色申告承認申請書の提出手続き
所得税の青色申告承認申請書を提出する際には、正しい手続きを理解しましょう。以下の事項を把握することで、よりスムーズに手続きが行えます。
- 所得税の青色申告承認申請書の提出期限
- 所得税の青色申告承認申請書の提出方法
青色申告が認められると税制優遇を受けられるため、フリーランスや個人事業主にとって非常に有益な制度です。
所得税の青色申告承認申請書の提出期限
所得税の青色申告承認申請書の提出期限は、税制優遇を受けるために非常に重要です。以下のように、個人事業を開始する月日によって提出期限は異なります。
- 1月1日〜1月15日に個人事業を開始
- 申告をする年の3月15日までに提出する
- 1月16日〜12月31日に個人事業を開始
- 事業を開始した日から2ヶ月以内に提出する
すでに事業を行っており、白色申告から青色申告に変更する場合は、青色申告を希望する年の3月15日が期限です。例えば、令和6年分の確定申告を青色申告に変更したい場合は、令和6年3月15日までに所得税の青色申告承認申請書を提出しなければなりません。
新たに事業を開始した際には、開業日から2ヶ月以内に申請ができる例外があります。ただし、所得税の青色申告承認申請書は確定申告書と同時には提出できず、指定された期限内に別途手続きする必要があります。
期限を逃すと、申告する年の青色申告の特典(税制優遇)を受けられなくなるため注意が必要です。青色申告を希望する方は期限を守り、計画的に手続きを進める必要があります。
所得税の青色申告承認申請書の提出方法
所得税の青色申告承認申請書の提出方法には、以下の方法があります。
- 税務署の窓口で直接提出する
- 郵送で提出する
- 電子申告(e-Tax)でオンライン提出する
- 開業支援サービスでオンライン提出する
実は「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」は提出方法の種類が同じです。それぞれの詳細やメリット・デメリットについては、以下の記事で解説しています。
提出先は、対象の税務署を間違えないように事前に確認しておきましょう。自分が住んでいる地域の税務署は、国税庁のウェブサイト(国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」)で簡単に確認することができます。
「税務署の窓口」または「郵送」で提出する場合、申請書は国税庁のウェブサイトからダウンロードまたは税務署で入手可能です。基本的な事業者情報のほか、必要に応じて添付書類を同封します。提出後の控えは大切に保管しましょう。
まとめ
「所得税の青色申告承認申請書」は、フリーランスや個人事業主が青色申告をする(税制優遇を受ける)ために必要な書類です。申請書の適切な記入と期限内の提出が、青色申告の税制優遇を受けるうえで欠かせません。
税務署指定のフォーマットに従って事業の基本情報を記入し、簿記方式や備付帳簿名などの詳細も正確に記入しましょう。申請書は税務署の窓口や郵送、電子申告(e-Tax)、開業支援サービスでの提出が可能であり、自分に合った最適な方法を選べます。
所得税の青色申告承認申請書を正確に記入・提出して、青色申告で節税対策をはじめましょう。