- 請求書の書き方が分からない
- 請求書に何を記載すべきか迷っている
- 請求書の発行手続きを知りたい
個人事業主・フリーランスとして独立すると、商品やサービスの提供だけでなく事業運営のすべてを自分自身で行う必要があります。その中でも請求書の作成は取引の基盤となるため、避けて通れない業務です。
この記事では、請求書の基本から効率的な作成方法まで解説します。記事を読めば、個人事業主・フリーランスになったばかりの人でも請求書が作成できるようになります。
個人事業主・フリーランスが知るべき請求書の基礎知識
請求書は取引の明細と金額を証明するために必要であり、仕事の対価(報酬)を請求するための正式な書類です。提供した商品やサービスの内容、金額を明記しておくことで、取引の詳細を正確に伝えることができます。顧客との信頼関係を築くためにも、請求書の正確な作成が求められます。
請求書の主な役割は以下の4つです。
- 取引が行われた事実を文書化する
- 支払い要求の正当性を証明する
- 税務上の記録になる(売上の報告、経費の計上)
- 法的紛争時の証拠資料になる
請求書は売上の報告や経費の計上など、税務上の記録としても重要な書類であり、事業の売上管理や帳簿記録では基本となるデータです。事業運営には正確な財務会計が求められ、請求書がその正確性を保証します。
法的な紛争が生じた際にも、請求書が事業主を守るための証拠資料になります。
請求書の書き方に関するポイント
請求書は商品やサービスの代金を請求する際に、顧客に対して提出する大切な書類です。間違いがないように細部にまで注意を払って作成することが求められます。法的要件に従って必要な情報がすべて含まれていることを、請求する前に確認しましょう。
請求書の記載項目
請求書の記載項目は以下の10項目です。法的要件に従って必要となる項目もすべて満たした形式で請求書を作成します。消費税の記載方法など、細かなルールにも注意しましょう。
- 「請求書」というタイトル
- 日付
- 請求書番号
- 発行者の氏名、住所、連絡先
- 請求先(顧客)の会社名や担当者名、住所、連絡先
- 提供した商品やサービスの詳細(品名、単価、数量など)
- 合計金額と内訳
- 支払期日
- 振込先の銀行口座情報
- 支払い条件や備考欄(必要に応じて)
合計金額と内訳には、税込か税抜かを明記します。税率も記載しておきましょう。
請求書の注意点
請求書は受け取るべき金額とその根拠を記載し、一目で理解できるようにしましょう。以下に注意すべきポイントを列挙します。
- 日付
- 商品やサービスの提供日と請求書の発行日を記載する
- 請求書番号
- 他の請求書と同一番号が発生しないように、発行した順番がわかりやすいように採番する
- 発行者と請求先(顧客)の会社名、氏名、住所、連絡先
- 表記(英語、日本語、漢字、ひらがな、カタカナ)に注意して正確に記載する
- 提供した商品やサービスの詳細
- 品名、単価、数量、単位を正確に記載し、計算ミスがないように各商品やサービスごとの小計を算出する
- 合計金額
- 消費税の額は、商品やサービスの金額とは別で記載し、消費税法に従う
- 支払い方法
- 現金や銀行振込など、口座情報も正確に記載する
金額の算出には、割引や手数料も忘れないようにしましょう。商品やサービスの内容をそれぞれ別の行に記載するなど、受け取る側が内容を理解しやすい工夫も必要です。
消費税の表示ルール
消費税の表示は消費税率がわかるように記載します。税抜価格を表示する場合には、消費税額も別途明記し合計金額を算出しましょう。表示価格が税込か税抜かを明確にして統一します。
軽減税率が適用される場合、通常の税率と区別し、適用税率を記載することは義務です。免税事業者であれば、その旨を表示して消費税が含まれていないことを伝えなければなりません。
支払期日と振込情報
支払期日は「2024年8月30日」のように具体的な日付を記載します。「請求書発行日から30日以内」などは受け取り方によって前後してしまうため、日付を明確に指定しましょう。
振込情報の詳細は、銀行名、支店名、口座番号、口座名義人を記載します。個人事業主・フリーランスの方は、個人名または事業名での明記が必要です。振込手数料の負担者が顧客か自分かを明確に指定してください。
利用可能な支払い方法の記載を忘れないように注意しましょう。電子決済の情報も加えると利便性が高まります。海外送金が絡む場合は、SWIFTコードやIBANなどの情報も記載します。
SWIFT(スイフト)コードとは、国際銀行間金融通信協会が定めた世界の銀行を特定するためのコードです。
IBAN(アイバン)とは、銀行口座の「所在国、銀行名、支店名および口座番号」を特定するための国際規格コードです。
個人事業主・フリーランスが簡単に請求書を作成する方法
現代ではさまざまな方法で手軽に請求書を作成できます。それぞれの業務スタイルや好みに合わせて選びましょう。主に以下の3つの方法がおすすめです。
- 請求書のテンプレートを活用する
- 請求書のテンプレートをカスタマイズして使用する
- 会計ソフトを活用して請求書を作成する
Excel・スプレッドシートやWord・Googleドキュメントを用いて、オリジナルの請求書フォーマットを作成することもできます。
どの方法を選んだとしても、正確な情報の入力と法的要件に従うことは必須です。
請求書のテンプレートを活用する
請求書のテンプレートを活用すると効率がよくなります。時間を節約し、プロフェッショナルな見た目の請求書を簡単に作成できます。
ウェブサイトでは無料または有料でさまざまなテンプレートが提供されており、Excel、Word、PDFなどのフォーマットで利用可能です。テンプレートには日付や金額、サービス内容など、必要な記載事項があらかじめ用意されているため、情報を入力するだけで請求書が完成します。
計算ミスや書式エラーを避けられるため、テンプレートの活用もおすすめです。
請求書のテンプレートをカスタマイズして使用する
請求書のテンプレートをカスタマイズすることもできます。自分の事業情報やロゴを追加したり、事業の色合いに合わせたりして、デザイン調整を行いましょう。
事業の個性を打ち出すと、相手に与える印象が強くなります。カスタマイズを使うことで、テンプレートをただの枠組みから個性のあるビジネスツールに作り変えることができます。
テンプレートのレイアウトを変更して、読みやすさや情報の見せ方を最適化することが可能です。法的要件に従って必要となる項目は、必ず含めるようにしましょう。
会計ソフトを活用して請求書を作成する
会計ソフトを活用して請求書を効率的に作成することが可能です。以下の3ステップで簡単に作成できます。
- 会計ソフトを選び、アカウントを作成する
- 銀行口座やクレジットカードを会計ソフトに連携させる
- 会計ソフトの請求書作成機能を使用する
あらかじめ銀行口座やクレジットカードを入力しておくことで、正確な請求書を自動で生成できます。顧客情報やサービス内容、金額などを請求書に反映できるため、会計ソフトを活用することで作業効率が良くなります。
ミスを減らしながら速やかに請求書を作成することが可能です。一部の会計ソフトには、請求書をPDFで出力したり、直接メール送信する機能も備わっています。
会計ソフトを活用した請求書作成は、取引履歴を整理して管理できるのがメリットです。請求書を取引先に送付した後は、履歴を会計ソフトで一元管理することができ、事業の売上管理や帳簿記録、確定申告が容易になります。
個人事業主・フリーランスの請求書の発行手続き
請求書を発行する際には、正しい手続きを把握しましょう。 請求書は取引の正確性を確保し、法的な証拠としても機能します。
取引内容を確認する
請求書の作成では取引内容の確認が重要です。正確な請求書を作成するために、提供された商品やサービスについて詳細にリストアップしましょう。リストアップする項目は主に以下の7項目です。
- 取引日
- 品目
- 単価の金額
- 数量
- 合計金額
- 支払い条件
- 納期
例えばデザインの仕事をした場合、デザインの種類、単価、数量を明記する必要があります。単位あたりの価格と総額を事前の合意内容に基づいて確認します。
取引先と交わした契約書や発注書を参照し、記載内容に誤りや相違がないか確認しましょう。各項目をしっかりと確認することで、双方の誤解を避けてスムーズな取引を継続できます。
請求書を作成・発行する
以下の項目を正確に、抜け漏れなく記載して、請求書を作成・発行してください。
- 「請求書」というタイトル
- 日付
- 請求書番号
- 発行者の氏名、住所、連絡先
- 請求先(顧客)の会社名や担当者名、住所、連絡先
- 提供した商品やサービスの詳細(品名、単価、数量など)
- 合計金額と内訳
- 支払期日
- 振込先の銀行口座情報
- 支払い条件や備考欄(必要に応じて)
消費税が発生する場合は消費税率・消費税額をともに明記し、合計金額に加えましょう。
取引先に請求書を送付する
取引先への請求書の送付方法は、電子メールまたは郵送です。一般的には請求書をPDF形式で保存し、電子メールに添付して送ります。郵送を選んだ場合は、封筒に「請求書在中」と明記し、追跡サービスを利用すると安心です。送付後は取引先に確実に届いたことを確認できます。
電子メールの場合は、送信確認の自動返信や読了確認機能を活用するのがおすすめです。受領を確認した後は、支払い期日の管理を徹底します。取引の証拠として、請求書のコピーを必ず保管しておきましょう。
個人事業主・フリーランスの請求書に関するよくある質問
個人事業主・フリーランスの請求書に関する疑問は多いため、よくある質問に対して解説します。今後疑問が発生した際に適切に対処できます。
印鑑は必要ですか?
法律的には印鑑必須ではありませんが、ビジネスシーン、特に法人間の取引では押印慣習が残っています。個人事業主・フリーランスも契約書や請求書に印鑑を求められることがあるため、取引相手の要求に応じる必要があるかもしれません。信頼関係の構築のため、取引先の要望には柔軟に対応することが重要です。
電子署名が認められるケースも増えています。紙に印鑑を押す代わりに電子的な署名が可能です。
支払い遅延に対する罰則はありますか?
支払い遅延に対する罰則の有無は、契約内容や取引条件によって異なります。通常、支払いが遅れると遅延利息が発生するのが一般的です。
遅延利息は契約書や取引条件に記載された率に基づいて計算され、支払いが遅れた期間分が加算されます。支払い遅延が長引く場合は、催促状の送付や法的措置がとられる可能性も考えましょう。
遅延利息の計算方法や罰則の詳細を事前に確認しておきましょう。罰則がない場合でも、顧客との信頼関係が失われてしまう可能性があるため、支払いを遅らせないよう注意してください。
個人事業主・フリーランスが請求書を作るときの注意点は?
請求書を作るときの注意点を押さえることで、請求手続きがスムーズに進み、信頼性の高い事業運営が実現します。以下の重要ポイントを押さえて請求書を作成をしましょう。
- 請求書には、正確に自身の連絡先と顧客の情報を記載する
- 法定表示事項(サービス内容、数量、単価、支払期限、消費税など)を必ず記載する
- 商品やサービスの提供日と請求書の発行日を両方記載する
- 他の請求書と被らない請求書番号を設定し、記録を管理しやすくする
- 契約内容や取引条件を正確に反映させる
- 消費税率の変更に注意し、税額の計算をする
- 支払い期限を明記し、遅延がないように催促の準備をする
- 請求書のフォーマットを統一し、受け取り手にもわかりやすい書き方を心がける
- 請求書を発行した後はコピーを保管して、記録として残す
取引先のニーズに合わせて、電子請求書の利用も検討しましょう。
まとめ
この記事では請求書の基本的な書き方や、効率的な作成方法について解説しました。以下の要点を念頭に入れて、プロフェッショナルな請求書の作成に役立てていただければ幸いです。
- 請求書は法的に売買契約の履行を証明し、税務上の記録としても機能する
- 請求書には、取引内容、金額(消費税含む)、支払期日、振込情報などを明記する
- 請求書作成の効率化には、テンプレートや会計ソフトの活用が有効である
- 印鑑は法的に必須ではないが、取引先の要求に応じて押印が必要である
- 支払い遅延に対する罰則は契約内容によって異なるが、遅延金を設定することが一般的である
請求書は個人事業主やフリーランスにとって、取引の透明性を保つうえで必須の文書です。業務の信頼性を高めるためにも、正確でわかりやすい請求書の作成を心がけましょう。